残念すぎる「ホテルオークラ東京」の建替えについて

昨日2015年8月31日 “ジャパニーズモダンの最高峰”といわれるホテルオークラ東京は、老朽化による建替えのため、53年の歴史に幕を閉じました。

現在の建物を壊した後、4年間の期間を経て地上38階の高層ビルへと生まれ変わり、客室数は現在の3割増しとなる約510、高層棟にはオフィスも入り、東京五輪直前の2019年春に営業を再開する予定とのこと。


つまり、どこにでもあるような高層ホテルに生まれ変わるために、あの伝統美が凝縮された世にも美しいホテルを壊すというわけです。

私はこの件についてはとても反対で、非常に残念なことであると思っています。


オークラは虎ノ門という東京の一等地に位置しますし、立地効率の良い建物にして利益の拡大を望むのは、企業としてはしごく当然のことかもしれませんが、費用対効果で考えたときに、本当に価値が上がるのでしょうか?

老朽化っていいますけど、老朽化だけなら部分的な「改装」で良いのではないでしょうか。

なんでもかんでも最新式の方が優れているわけではない。全くない。

それにオフィスとしては、あのような小高い丘(つまり坂の上)にあるのは通勤が大変ですし、優れた立地と思えません。



仮に建物としての機能的価値は上がったとしても、文化的価値は下がるでしょう。

現在のオークラには、1962年に建てられた最高のジャパニーズモダン建築だという世界的な希少価値がありますが、あの風情の再現は不可能だからです。

建築、画、工芸、美術など、たずさわる人がこの50年ですっかり入れ替わっています。人がつくるものというのは、その人自身が投影されますから、生きてきた時代・環境が違えば、できあがるものはやはり異なってきます。


私は1920年代から60年代の映画が好きでよく観るのですが、日本人の美意識は変化しているように感じます。

高度経済成長で失われた何かがあるのでしょうか。

「継承」と口でいうのは簡単ですが、なかなか難しいですね。



世界に誇れる文化財とも言える、オークラ。

やはり、日本を代表する建築物として、大切に維持するほうが良かったのではないでしょうか。

後悔先に立たず。

本当に残念です。

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