90年代ファッションのリバイバルに感じるベーシック回帰
昨年から『WWD』などの雑誌でも特集が組まれ、リバイバルブームかと言われていた90年代ファッション。
チェックのシャツにダメージデニム、Dr.マーチンというグランジスタイルが、今振り返った「THE 90年代スタイル」と認識されているかもしれないが、それはほんのごく一部だ。
90年代ほど変貌激しくファッションが多様化していた時代はなく、現代のスタイルは90年代までに出尽くしていると言っても過言ではない。
2000年以降のすべてのファッションは、90年代までの模倣である。
80年代後期からリーバイス、ラルフ、バナリパ、GAP、ニューバランス、コールハーンのコインビットローファーなどが人気のトラッド系アメカジに始まり、アニエス系フレンチを経由して、古着ブーム、音楽文化の色濃いストリートスタイル(先述のグランジはこの中のひとつ)へ突入するこの10年。
さらに細かく分けると、「●●系」と言われるような様々なスタイルがあり、モッズ系、スケーター系、クラブ系、50‘S系、モード系、などなどなど…まったく違うスタイルが混在していた。
今ほどには、いろいろなブランドが国内展開しておらず、セレクトショップが全盛期だった。セレクトショップは個人経営が多く、店のバイヤーが欧米で買い付けてきたものを売るというやり方だったので、1アイテムの入荷数が少なく、人とかぶることは少なかったかもしれない。探すおもしろさもあった。服屋を見てまわることの価値がそこにはあった。
古着ブームもこの頃で、今では考えられないかもしれないが、ヴィンテージのリーバイスが100万円以上の値段になるなど、希少価値のあるデニムが高騰していた。それはそれだけの需要があったとも言え、ファッションに傾倒している人の多い時代だったとも言える。
この頃まだ、ネットという文化は定着していない。
私がはじめて携帯電話を持ったのは95年であるが、その頃はメール機能さえなかった。
ファッションの情報源は主に雑誌と友人の口コミと、街にいるおしゃれさんやショップ店員などのファッションであった。
雑誌が最も売れたのは96年だと発表されているが、その影響力は絶大であったと思う。
★★★★
「流行は繰り返される」と言うが、この夏のカジュアルなサンダルブームはまさに90年代のリバイバルを感じさせた。
ビルケンやtevaなどがその象徴であるが、そのベーシックなデザインをヒントに、様々なブランドからも展開されていて興味深かった。
ただ、コーディネートは90年代のアメカジ傾倒とは少し違って、現代の特徴はいわゆる「エフォートレス」、抜け感である。
がんばりすぎていないように見えて、清潔感やこなれ感があるというもので、全体的にとてもシンプルですっきり、洗練されているのが2015年風だった。
ニューバランス・ナイキ・リーボックなどのスニーカーから、カジュアルサンダルと来ると、90年代の歴史から見て次に来るのはコンバースなのであるが、どうだろう?
いずれにせよ、現代のファッションは飽和状態である。
流行に関係なく、繰り返し支持され続けるものは、そのブランドアイコンであるもの、ベーシックなものだろう。
安いものをたくさん、ではなく、良いものをたくさん、でもなく、
良いものを少なく、がこれからの時代にあっているかなと感じる秋である。
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